逆境のキャリア術

外資系コンサルタントとして勤務している経験から、転職やキャリアについて発信するブログです

専門性がないと悩む人でも闘えるキャリア形成方法

  • ジェネラリストとして、様々な部署を経験し、一定の経験や話しについていけるだけの知識はあるが、他の人と比べて優れたスキルを持っていない
  • 専門性をもつことが必要と言われる中で、自分のキャリアをどう築いたら良いのか分からない
  • 30代後半や40代になって、昇進していくためには専門性が必要だが、特に誇れる専門性がない

と悩んでいる人は多いのではないでしょうか。
特に、日系企業で総合職で配属され、ローテションで様々な部署を経験している人は、薄く広く知識はあるものの、他の人に負けない深いスキルを持っていないので不安を感じている人も多いかと思います。


折しも、巷では、“メンバーシップ型雇用から、JOB型雇用”への移行が叫ばれています。メンバーシップ型雇用とは、総合職として採用され、ジョブローテションを繰り返しながら、会社を支える人材を育成する、ジェネラリスト育成の雇用システムであるのに対し、JOB型雇用とは、仕事に求められる職能(スキル)が規定され、社内外を問わず、仕事をこなせるスキルを持った人を雇用する考え方です。
有名な所では、日立など、日系の大手企業もこのJOB型雇用を取り入れる方針を示しており、今後、多くの企業で広がっていくことが予想されます。

こうした時代の流れも踏まえて、今まで総合職として働いてきた人の中には将来のキャリアに不安を感じている人もいると思います。
この記事では、こうした不安を感じている人が市場価値のある人材いるための具体的な方法をお伝えしたいと思います。

 

まずは、現状の自分のスキルを棚卸する

こうしたキャリアの話をするとき、ありがちな反応として、“自分は長年、営業として働いてきており、人脈ももっているから大丈夫だ”という根拠なく楽観的になったり、
“自分には特に誇れるスキルもないから不安だ。この先どうなっていくんだろう”とやたらと悲観的になるかのどちらかの反応を取る人が多いです。
でも、どちらも、今後のキャリアを考える上で、あまり役に立ちません。感情論に走るよりも、まずは、今のあなたのスキルをきちんと、正しく捉えることが大事です。現状に対する正しい認識がなければ、今後、あなたがどうキャリアを築いていければ良いのかを考えることができません。

 

正しいスキルの捉え方

こう書くと、専門的な特化した経験を持つ人や特定領域のサービスを提供するエージェントの人は、スキルを答えることができますが、メーカーなどジェネラリストとして経験を積んだ人は“自分には特に誇れるスキルがない”と考えがちです。そうした人は、UX/UIデザイン、ファイナンスM&A、データ分析、デジタルマーケティングシステム開発など、履歴書に書きやすい専門特化した知識・経験のみがスキルであると考えている人が多いですが、それは間違いです。これらスキルは、ビジネスパーソンが備えるべきスキルのごく一部のスキルにしかすぎません。

では、スキルにはどのようなものがあるのでしょうか?私が長年勤務しているコンサルティング会社では、スキルを定義する時、以下の考え方で定義しています。

「ソフトスキル」=あらゆる仕事をする上での基礎となるスキル。
パソコンに例えるなら、WindowsiOSなど、ソフトウェアを動かす土台となるOSに相当するスキル
「ハードスキル」=特定領域の仕事を遂行する上で必要となるスキル。
パソコンに例えるなら、数値計算作業をこなすためのExcel、プレゼンテーションをこなすためのPower Pointなど、特定の業務を遂行するためのアプリケーションに相当スキル

 

多くの人は、スキルというと「ハードスキル」にのみ注目している人が非常に多いです。確かに、これらのスキルは履歴書にも書きやすく、分かりやすく自分のスキルをアピールすることができます。例えば、あなたがパソコンを使う時にも、OSよりも片づけたい業務があり、それを処理するために使えるツールであるアプリケーションに目が生きがちだと思います。でも、実際にPCの満足度に影響するのは、単にアプリで何ができるかだけではなく、PCの反応スピードであったり、操作のしやすさであったり、壊れにくさであったりと、土台となるOSに多くの部分を依存しています。


スキルもこれと同じで、分かりやすくアピールしやすい「ハードスキル」に目がいきがちですが、ビジネスパーソンのOSに当たる「ソフトスキル」として、自分が何を持っているか?を正しく捉える必要があります。「ソフトスキル」は「ポータブルスキル」とも呼ばれることもあります。どの職場環境に行っても通用する“ポータブル(持ち運び可能な)スキル”という意味であり、まさにこのスキルを持っている人は、終身雇用ではなくなった今、世の中で求められる人材ともいえます。


「ソフトスキル」があまり注目されてこなかったのは、単に、それを言語化する人がいなかったということが大きいです。しかし、最近は、ポータブルスキルに徐々に注目が集まっています。まだ、言語化されていないが故に、あなたの中に隠れているスキルをきちんと可視化することで、自分自身の生かし方を考えて頂きたいと思います。

「ソフトスキル」の棚卸の仕方 ~代表的な6つのスキル~

ここまで「ソフトスキル」の重要性を説明してきましたが、いざ、あなたがどのような「ソフトスキル」があるのか?を棚卸ししようとすること、困ってしまう人が多いかと思います。

その理由は、分かりやすく定義された「ハードスキル」に対して、「ソフトスキル」は一般的にきちんとした定義がなく、言語化されていないが故に、棚卸ししようにも、そもそも、何がソフトスキルかが分からないということが大きいです。この記事を読んでいる方の中にも、“なんとなく、今までの経験上、ソフトスキルが重要であることは分かるけど、具体的に、ソフトスキルってなんなのか分からない”と感じている人が多いのではないでしょうか。


そこで、私が勤務しているコンサルティング会社でのスキル定義や様々な本などから「ソフトスキル」とは具体的に何か?を紹介することで、ぜひ、あなたはどのようなスキルを持っているのか?を考えるヒントにしていただきたいと思います。そして、過去の経験から、下記の「ソフトスキル」を持っていることで、どう会社に貢献できたか?を書き出してみて下さい。そうすることで、あなたの価値を再発見し、自分自身の生かし方やアピールできるスキルを見つけることができるはずです。

 

ソフトスキル①:目的思考/仮説思考

上記に関するテーマで数々の本が出版され、重要性は認識されているものの、実際に身に着けている人は驚くほど限られているスキルです。
その仕事をやるそもそもの目的から遡って、俯瞰的・構造的に物事を理解し、どこに問題や課題があるのかを仮説ベースで捉えます。人はついつい、目の前の仕事や作業を単にこなしがちですが、そもそも、この仕事は何のためにやっているのか?という目的から考えて、あるべき姿を構築したり、現状と目指す姿とのギャップ(多くはこれを課題と呼びます)を解決するための方法をMECEに整理し、比較・検討することができるようになります。

よくある誤解は、事業やブランドの戦略構築の時に主に使うと考えている人もいますが、普段の仕事においても、「目的から考えてベストな選択肢を選ぶ」「現状課題の仮説を立て、ファクトに基づいて、仮説の正しさを検証する」機会はいくらでもあります。このようなスキルを持っていれば、目先の仕事ではなく、より大局的で、高い視座から物事を見られるようになるので、会社や事業部にとって、本質的に意味のある活動に注力することができます。

ソフトスキル②:ファシリテーション

アイディアやブレインストーミング、製品開発、企画会議などにおいて、参加者から意見を引き出し、会議での議論を活発にしたり、決めるべきことを決めたりするスキルです。特に、テレワークでオンライン会議が増えた現在、参加者に満遍なく意見を求めたり、合意形成を図る能力は非常に重要になってきています。
良いファシリテーションをするには、適切な議題の設定、各テーマの時間配分、事前の情報のインプット、参加者が意見を出しやすい雰囲気づくり、意見を引き出す投げかけ、ラップアップなど様々な工夫が必要になります。こうした能力があれば、参加者のモチベーションを高めることができたり、活発な意見を引き出すことができるなど、事業やプロジェクトの成功に大きく貢献できる能力の1つと言えます。

 

ソフトスキル③:リーダーシップ

リーダーシップというと、管理職やリーダークラスにだけ求められるスキルと勘違いしている人もいますが、どのビジネスパーソンにとっても、リーダーシップは重要なスキルです。具体的には、リーダーシップとは「自分で目標を掲げる/課題を見つける」「目標達成や課題解決のために、必要に応じて周囲を巻き込みながら自らがオーナーシップを持って動く」というスキルのことを指します。もっと分かりやすく言うと、“XXXという問題はあるけど、まあしょうがないよね”“なんで、こんな問題が起こるんだろう”という日和見な態度ではなくて、“自分がその目標を達成する/課題を解決する”と決意し、そのために、自ら能動的に動くことです。例えば、“会議がいつも時間通りに終わらない“という課題があれば、”議題と所要時間、タイムキーパーを決めて、所要時間内に終わらせる“など、自ら解決策を提案することはいくらでもできます。でも、多くの人は自分の役割ではないと考え、問題に直面しても積極的に動くことはありません。その分、役割に縛られず、自ら能動的に責任を持って動ける人材は会社にとって大きな資産となります。誰でもなく、自分がやるという覚悟を持った人材は、いつの時代も強く、普遍的なスキルであると言えます。

 

ソフトスキル④:資料作成・プレゼンテーション

人に対して分かりやすく、論理立てて伝わる資料を作成し、プレゼンできる能力です。プレゼンでの論点は何か?伝えたいメッセージは何か?を構想し、ストーリーにして、資料を構成する力やポイントを分かりやすく、時間配分にも注意しながら、プレゼンし、質疑応答にもきちんと答えられることは、どの職種であれ、求められるスキルと言えます。特に、論理的に、分かりやすく伝えられる力は、何度も資料を作り、レビューされる経験を持ってしか身につかない力であり、これを持っていることは、どの職種で働くとしても、ベースになる重要なスキルと言えます。

 

ソフトスキル⑤:対人コミュニケーション

対人コミュニケーションとは、根回しが上手いとかそういうことではなく、相手の目線や求めるものを的確に読み取って、アクションできる力のことです。
メール、電話、会議、口頭での会話など、あらゆる人と人がコミュニケーションする場において、質問をして相手の期待や要望を的確に図ったり、要望に対してストレスなくやり取りするスキルのことです。また、時には、相手の考えを改めてもらうために、説得したりする力も含まれます。
この力は、社内の上下関係や他部署、社外においても当然、必要になってくる力であり、スムーズに仕事を進めていくために必要なスキルといえます。

 

ソフトスキル⑥:プロジェクトマネジメント

複数の人や異なる所属の人が関わる仕事をするときには、ゴールに向けて、どのような体制やタイムラインで進めるかという計画や、計画通りに進捗しているかといった進捗管理工数管理、課題・リスクマネジメントが必要になります。
特に、大規模で、長期間にわたるプロジェクト型の仕事の場合、プロジェクトマネジメントがきちんとできているかどうかは、その仕事の成否を占うと言っても過言ではありません。また、テレワークの時代になって、普段の仕事でも、仕事やタスクの見える化は非常に重要になっており、プロジェクトマネジメントの各種管理スキルは、現状把握や問題発見・対策を行う上で、益々、重要度が増していくことが予想されます。
いわゆる事業戦略を構想するような華のある仕事ではないため、敬遠されがちであり、きちんとプロジェクトマネジメントができることは大きな強みになります。

 

自分の強みのソフトスキルを発見し、磨くことがキャリア形成に繋がる

以上、「ソフトスキル」の代表的な6つを紹介しました。
上記のソフトスキルをご覧いただいて、あなたのこれまでの経験の中で、自分は持っていると思えるスキルがあれば、そのスキルが会社や事業、部にどう貢献できたかを具体的に考えることで、あなたが持っている強みのあるスキルを見つけることができます。また、今後もそのスキルを積極的に伸ばしていくことで、よりその分野の「ソフトスキル」の専門家として、知見と経験を蓄えることもできます。
そして、あなたがスキルと思っていないご自身の経験の中にこそ、実は、ビジネスパーソンの基礎体力であるOSとして重要なスキルが隠れている可能性が高いです。


実際、世間では高度な知的スキルを持っていると思われがちなコンサルタントの中には、専門分野の知識はほとんどなく、上記のソフトスキルだけで生きている人もいます。一方で、専門知識は非常にあるものの、全くクライアントから仕事をもらえないコンサルタントもいます。両者の違いは何か?と考えると、やはりこのソフトスキルを持っているかどうかにあります。ソフトスキルがあれば、問題を俯瞰的に捉え、本当に重要な所にフォーカスしたり、周囲を巻き込んでスムーズに仕事をすることができるので成果を上げるやすくなります。ぜひ、上記6つのスキルを参考に、まだ発見されていないあなたの隠れたソフトスキルを見つけて、磨いて頂きたいと思います。

 

ソフトスキルを棚卸ししたら、外部の人から客観的なフォードバックももらう

あなたの中にあるソフトスキルを棚卸しできたら、転職エージェントのコンサルタントにそのスキルを伸ばせそうな方向性を聞いてみることをお薦めします。
社内の人間ではなく、転職エージェントに聞く理由は、
①様々な業界、会社を見ており、自社だけでなく、他社で求められるスキルを把握している
②現在の転職市場のトレンドから、あなたのソフトスキルにプラスオンして伸ばすことで、より市場価値が高まるスキルの方向性を特定できる、の2点にあります。

人材価値には、よく言われるように、「希少性」が重要です。つまり、誰でもできることではなくて、あなたにしかできないことを持っているほど、価値は高まります。あなたが今持っている「ソフトスキル」に何を掛け合わせると、今までの経験を生かした希少性のあるスキルを身につけられるか?を考えるためにも、ぜひ、人材価値、スキル価値に知見のある転職コンサルタントからアドバイスをもらい、目指す方向性を定めることをお薦めします。


これまで、自身のスキルについて考えたことがない人は、ぜひ、今すぐにでもどのスキルを自分は持っていそうか?そのスキルでどう貢献できたか?を真剣に考えて下さい。
そして、何を今後、強める必要があるか?を考えて下さい。早くやればやるほど、経験を積む時間が生まれます。また、若ければ若いほどチャレンジしやすくなります。
なかなかスキルの棚卸をやろうと思っても、日々の業務で後回しにしてしまう人は、先に、転職エージェントなど外部の人に自分のキャリアについて相談するアポイントを入れてしまうのも手です。先に約束を入れると、それまでにやろうという目標ができるので、後回しにするのを防ぐことができます。

ぜひ、マイルストンを自ら設定して、能動的にキャリアについて考えて頂きたいと思います。それが、あなたが後々、後悔しない生き方をすることに繋がるはずです。