逆境のキャリア術

外資系コンサルタントとして勤務している経験から、転職やキャリアについて発信するブログです

生産性を10倍に高めるためのコンサル流仕事術

“効率的に仕事をこなして、仕事ができる人と思われたい“
”残業が多く、仕事の効率を上げる必要性を感じている“
”上司やクライアントからのレビューで手戻りが発生し、仕事を効率的に進められない“
などの悩みを持つ人は多いと思います。

また、最近では、働き方改革の影響もあり、以前にも増して、多くの企業でダラダラ残業をやらず、メリハリをつけて仕事をするよう社員に求める傾向もみられます。
そうした環境の中で、メリハリをつけて生産性を高めて働こうと努力しているが、なかなか、自分の思う通りに仕事が進まず、もどかしさを感じている人も多いのではないでしょうか。

限られた期間で、少人数でプロジェクトをこなす必要のあるコンサルティング会社では、社員の生産性を高め、効率的に働くための様々な技があります。この技は非常に有効にも関わらず、実践している人があまりいないので、ぜひ、実践して頂くことで、効率的に仕事を進めることができるようになります。

 

 

生産性の高める方法に関するよくある誤解

仕事を効率的にこなす、生産性を高めるためのよくある誤解は、1つ1つの作業の効率を上げれば、効率的に仕事が進められると思っている人が非常に多いです。
かくいう私も、社会人になりたての頃は非常に仕事が遅く、決して人より仕事を持っている訳でもないのに、残業時間が月平均で80時間を超えていました。

同期の中でも圧倒的に残業時間が多かった私は、仕事を効率的にこなすために、パワーポイントやエクセルを効率的にこなせるよう、ショートカットキーの使い方や関数を覚えたり、テンプレートを作って、なるべく効率的に仕事をこなせるように努力しましたが、相変わらず残業時間は長いままでした。1つ1つの作業を効率化するのはある程度は早くなりますが、決して、劇的に仕事のスピードを上げることはできません。

コンサルティング会社に転職してから、仕事ができる同僚を見て気づいたことは、生産性の高い働き方をするには、1つ1つの作業を効率的にこなすことは、さほど重要ではないということです。それよりも、仕事の目的やゴールを明確にし、最駄な仕事をせず最短距離で仕事をすること、作業の全体設計を考え、どう作業を組み立てるかが重要です。

以降では、仕事をする上で、最短距離で仕事を終わらせるにはどうしたら良いのか?作業手順を組み立てる際に、どのような点に留意したら良いのか?を説明したいと思います。

 

最短距離で仕事を終わらせるための3つのテクニック

1.仕事の「目的」と「ゴール」を明確にする

最短距離で仕事を終わらせるために、まずやるべきことは、仕事の「目的」と「ゴール」を明確にすることです。「目的」は何のためにこの仕事をするのか?何に活用するための仕事なのか?を考えることです。

そして、「ゴール」とは、その目的を達成するために、いつまでにどのような成果物を出す必要があるか?を明確にすることです。例えば、自社の事業戦略を考えるために、競合含めた事業環境を分析するという仕事があったとします。このケースでの仕事の目的は「自社と競合の最近の商品特徴、広告・販促、価格などの現状を調べることで、競合と差別化するためのマーケティング施策に生かす」ということです。

また、この目的を達成するには、最終的な成果物として、「自社及び競合の商品、広告・販促、流通、価格などの4Pを比較できるようにまとめる」必要があります。まずは、いきなり作業をするのではなく、最初に目的とゴールを明確にする必要があります。もし、自分で考えても分からない、自信が持てない場合は、上司に確認してみて下さい。最初の段階で認識がずれていると、後でどれだけ頑張って作業をしても期待に沿った資料を作ることはできません。


2.ゴールをブレイクダウンして、やるべきことを明確にする

「目的」と「ゴール」が明確になったら、次に、成果物を作るために、どのような論点があるのかブレイクダウンして、整理することです。多くの人は、「目的」と「ゴール」がなんとなく答えることができますが、ゴールをさらにブレイクダウンして、具体化せずに、いきなり、情報を収集したり、資料を作り始める人が多いです。

かくいう私もかつてそうだったので、よく分かるのですが、それをすると、なんとなく頭の中にある「重要そうなこと」を手当たり次第調べていくことになるので、頭の中が整理されず、時間ばかりかけて作業してしまいがちです。でも、それをしてしまうと、迷宮の中に迷い込んでしまい、いたづらに時間ばかりを費やしてしまいます。

例えば、先ほどの競合の4Pを調べるという例でいえば、「広告・販促活動」と言っても、様々な活動があり、十分にブレイクダウンしきれていません。広告・販促には「TVCM」もあれば「店頭でのPOPや商品の陳列」「チラシ」などの“媒体”という切り口もあれば、何を訴求するのか?という“メッセージ“という切り口もあります。

そして、一旦、今回の仕事で調べる必要のある全体像を洗い出した上で、何に重点を置いて調べなければいけないかを優劣をつけます。このように全体像を整理することは、資料作成におけるプライオリティをつけるという意味でも、また、途中で混乱せずに済むという意味でも重要です。


3.作業設計を組み立てる

資料作成する対象をブレイクダウンした後に、いよいよ実際に作業を設計するフェーズに移ります。
作業設計する際、コンサルティング会社では、「SIPOC」というフレームワークで作業を組み立てます。(SIPOCという言葉を意識していない人もいますが、実際の作業の組み立てはこのフレームワークに沿って進めている人が多いです)

・S/I(Supplier/Information):
課題やテーマについて考察するために必要な情報を集めます。自分で調べる場合もあれば、他部署や外部の会社が情報を持っている時は、情報を提供してもらうよう依頼する必要があります。

・P(Process):
集めた情報を分析・考察します。この箇所は主に担当である自分が行い、適宜、上司のレビューを受けることになります。

・O/C(Output/Consumer):
分析・考察した結果を資料にまとめ、検討結果を報告します。報告する先が複数ある場合は、その時間も考慮して作業を組み立てる必要があります(例:まず、部長に報告したのちに、役員に報告するなど)

 

どの作業であっても、上記のようなフェーズに分けてどのぐらい時間がかかるのかを設計していきますが、その際のポイントとしては、
①他人に依頼する必要があることは、早めに依頼し、他の人が作業するリードタイムを考慮する必要があること、
②作業する前に上司へのレビューを先に入れていつまでに作業を終えるのか明確にすることです。

 ①は当然ですよね。作業に依存関係がなければ、他の人に依頼して作業してもらっている間、自分の作業を平行して進められるので、先に、他の人に依頼する仕事はお願いするのは鉄則です

 

②は意外と実践していない人が多いのではないのでしょうか。私もコンサルティング会社に入ってから実践するようになりました。それまでは資料ができてから、上司やクライアントにレビューを依頼していましたが、往々にして上司は忙しく、なかなか予定が空いていないので、資料作成~レビューまでに待ち時間ができてしまいます。それを避けるためにも、資料が完成する前に、早めにレビューの時間を確保して、待ち時間をなくすのが大事です。

 

また、上司のレビューを目標として、作業をすることで、締め切りが生まれ、緊張感を持って仕事を進めることができます。人は、どうしても、目標がないと仕事を後回しにしたり、ダラダラ仕事をしてしまいがちです。自ら期限を切って、緊張感を持って仕事に取り組むことは生産性を高める上で必須です。自分1人の力で生産性を高められる人はそれほど多くいません。意思の力に頼るのではなく、やらざる終えない仕組みを作って、効率的に仕事をこなしましょう。

 

とはいえ、“資料ができる前に予定を入れるのは不安だ”“もし、万が一、資料が完成できなかったらどうしたら良いのか”と思われる方もいるかもしれません。
ただ、仕事である以上、期限はあり、遅かれ早かれ、上司のレビューが必要なことは変わりません。それであれば、先に予定を押さえて、それを目標に作業をした方が効率的に作業を進められます。

 

このようにして、作業の進め方やいつまでにレビューをしてもらうかを決めたら、スケジュール表に、日別でいつまでにどの段階まで進めるのかを書き込みましょう。
日別で書き込むことで、いつまでに何をするかのペースメーカーとなります。もし、自分で立てたスケジュールで良いのか不安という人は、その時点で先輩社員に見てもらってもいいでしょう。

実際、私もコンサルタントになりたての頃は、仕事ができる先輩社員がどのような段取りで仕事を完遂させようとしているのか教えてもらうことで、おおよその時間感覚をつかんでいました。

実際に作業を進めたら、予定通りに進行しているか確認しましょう。
予定通り進まない時は、その原因がどこにあるのか確認することで、今後の作業の立て方に生かすことができます。
例えば、急に対応しなければならない別件が入ったなら、今後はそうした事態も含めてバッファを見込む必要あります。あるいは、自分の作業が思ったより時間がかかったなら、どのぐらいの時間をかければ仕事を終わらせられるのかを正確に認識できるようになります。

余談ですが、非常に仕事ができるコンサルタントほど、自分の作業時間にどれだけかかるかの認識がとても正確です。というのも、コンサルタントはぎりぎりまで資料を作らず、考えることに時間を取り、最後になって、一気に資料を仕上げていきます。

その際、資料作りのなどの作業にどれぐらい時間がかかるかを正確に理解しておかないと、考える時間にどの程度時間を配分できるか測れないからです。このように、自分の作業時間を正確に測れることは、考えるという価値を生む出す時間にどの程度使えるかを推し量る上で、非常に重要です。


以上、コンサルタントが実践している最短距離で、効率的に仕事をするための進め方について説明してきました。

こうして書くと、“作業計画を立てて、作業するのは当たりまえだ“と思われた方もいるでしょう。でも、実際に効率的仕事できていない、同じ仕事量なのに人より残業時間が長いと思っている人は、例外なく、最初のゴールの設定がきちんとできていない、あるいは、ゴールからブレイクダウンして実作業の計画の立て方が荒い、無駄な待ち時間が発生しているなどが大半です。
ぜひ、ショートカットキーを覚えるなど、些末な生産性向上に取り組むよりも、仕事の進め方をもう一度見直して頂きたいと思います。