逆境のキャリア術

外資系コンサルタントとして勤務している経験から、転職やキャリアについて発信するブログです

コンサルに入社する前に知っておくべき不都合な真実

コンサルティング会社に転職すると、
“事業・経営戦略に携わることができる”
“事業買収、グローバル案件などに関わることができキャリアをステップアップさせることができる”
と思われている方は多いかと思います。

最近では、東大生の人気就職先として、軒並みコンサルティング会社が並んでいることからも、“コンサルティング会社=経営課題を解決・支援するエリート集団“というイメージが強いです。

でも、単なる憧れで応募すると、そもそも面接で志望動機が非常に浅く、”コンサルティング会社の仕事を理解していない“と評価されてしまいます。また、仮に面接を通して入社したとしても、実態とのギャップに苦しみ、”こんなはずではなかった“と苦しむことになります。実際、私の所属するファームでも入社前との期待との落差に失望して、辞めていく人も多く見てきました。


そうした不幸な事例を避けるためにも、これからコンサルティング会社への転職を考えている方に、ぜひ、リアルな実態をお伝えしたいと思います。もちろん、他のウェブサイトや各社のホームページを見ても、業務紹介は載っていますが、形式的な業務の説明をしているのみで、どういった内容の仕事が多いかや身につくスキルなどリアルな実態はほとんど伝わっていないかと思います。

この記事は、もし、過去に戻れるなら、コンサルティング会社に入社する前の自分に伝えておきたかったことを書きました。これから、コンサルティング会社への入社を考えている皆さんにはきっと有益な情報になっていると思います。

 

 

 

コンサルティング会社の種類と採用難易度

コンサルティング会社は、大きくは「戦略系」「総合系」「ITコンサル系」と大別されます。

「戦略系」は主に企業の経営戦略や事業戦略の策定支援が中心になります。
M&Aファイナンス、IT、人事など個別の課題ではなく、会社や事業の方向性を検討し、意思決定を支援するのが戦略系のプロジェクトです。
マッキンゼー、BCG、ATカーニー、ベイン・カンパニー、ドリーム・インキュベーター、ローランドベルガーなどが代表的な企業です。

欧米に拠点を置いて展開するグローバルファームが大半であり、プロジェクトのメンバーも様々な国からメンバーが集められることも珍しくないため、英語面接がある企業が多く、ビジネスでやり取りするだけの英語力は求められます。
また、ファームの知名度が高いこともあり、採用難易度は高いです。

コンサル未経験から採用されるには、経営企画でエースとして働いてきた、新規事業を立ち上げたなど、会社の中枢レベルで働いてきた人、海外MBA取得者でコンサルタントとしての論理的思考や抽象化能力がある人、医者や弁護士などの特別な知見がある人などのレベルでないと採用されるのは難しいと思います。

 

次に「総合系」とは、川上から川下まで一通りのコンサルティングサービスを提供しているファームです。戦略立案、IT化構想などの構想フェーズからM&A、PMI、業務改善、人事・組織、CRM、システム導入まで、幅広くサービスを提供しています。代表的な企業としては、会計系ファームのコンサル会社が多く、デロイトトーマツコンサルティング、KPMGコンサルティングPWCコンサルティング、EYアドバイザリー、アクセンチュア、ベイカレントなどの企業があります。

「戦略系」との違いは、経営・事業戦略に関する案件よりも、M&A、PMI、業務改善、人事・組織設計など個別のテーマに関するプロジェクトが多いです。もちろん、各社自社の知名度向上やフィーのアップを目的に、戦略部門を置いて、経営・事業課題に取り組んでいると唄っていますが、現実的には、戦略系の案件は、戦略系ファームが担っていることが多いです。(もちろん、そうした案件がない訳ではないすが、全体として少ないです)

採用の難易度については、会計系のファーム(デロイト、Pwc、KPMG、EY)はやや高めですが、これは正直、どの部署を受けるか次第かと思います。専門的なスキルが必要とされるM&Aファイナンス、人事・組織などは比較的採用基準が厳しいです。一方で、PMO(専門スキルを提供するというよりは、プロジェクトの管理・運営を担う事務局)案件が多い部署やシステムやソリューションパッケージの導入など成長分野であり、かつ人員も多く必要な部署では、比較的採用基準は甘い印象です。

また、英語力は、国内のプロジェクトに携わる限り、マストではないです。もちろん、ファームのバリューを保つために最低限のレベルは求められますが(TOEIC700点程度)、ビジネスで使いこなせる必要があるかというと、全くその必要はないです。

ただし、当たり前ですが、英語力があれば、クロスボーダー案件に関与できるなど仕事の幅は広がります。また、事業戦略の検討のために、海外事例を収集する場面はよくあるので、スピーキング、リスニングは置いておいたとしても、リーディングはできた方が良いです。

 

最後に「ITコンサル系」は、その名の通り、コンサルティングのスコープをIT領域に特化したサービスを展開しています。システム開発やパッケージシステムを持っている企業がコンサルティングサービスを手掛けるケースが多く、システム導入の上流工程として、IT構想、業務改善の洗い出しを行った上で、システムやパッケージ導入に繋げるという仕事のパターンが多いです。代表的な企業としては、SAP、NTTデータ日本オラクル、フーチャーアーキテクト、キャップジェミニなどがあります。

採用の難易度は、IT知識やスキルを有しているかなどが判断基準であり、「戦略系」「総合系」ほどのコンサルタントとしての論理性やビジネスセンスが問われている訳ではないです。実際、「ITコンサル」に入社した後に、ステップアップとして「総合系」ファームのテクノジー部門に転職するケースは多いです。

コンサルティング会社に入る前に知っておいておくべきこと

コンサルティング会社を選ぶにあたっては、どのコンサルティング会社を選ぶかも重要ですが、それ以上にどの部署を選ぶかも非常に重要です。
というのも、部署を間違えると、自分が伸ばしたいスキルにマッチしないプロジェクトに従事することになってしまったり、思い描いたコンサルタント像とは違う仕事をすることになってしまうからです。

さきほども述べたように、コンサルティング会社の部署は大きく「コンピテンシー」と「インダストリー」に大別されます。あなたが業種関係なく、特定領域の専門家になりたいのであれば、「コンピテンシー」を選択するべきです。

例えば、M&A、PMI、人事・組織、ファイナンスCRMマーケティング、テクノロジーなどで専門家としてやっていきたいのであれば、コンピテンシーの部署に属することで、業種問わずプロジェクトにアサインされ、経験を積むことができます。また、上司や同僚も同じように専門家であるので、同じ部署内での学びも得られる点もメリットです。

一方でデメリットとしては、クライアントが変わるので、顧客とのリレーションを深める点ではインダストリーよりも不向きではあります。特に、マネージャー以上になると、デリバリー(コンサルティングサービスをどれだけ提供したか)だけでなく、セールス(売上獲得にどれだけ貢献したか)も評価対象となるので、この点は認識しておいた方が良いです。

また、一部のコンピテンシーは業務の案件の特性上、非常にハードワークになりやすいです。特に、M&Aは候補企業の洗い出し、デューデリジェンスなど、期日が決まった中で、非常にセンシティブな案件を担うことになるので、時間的にも精神的にも厳しいプロジェクトが多いことは理解して頂いた方が良いです。
(とはいえ、M&Aに携わっている方なら、百も承知だと思いますが・・・)

 

「インダストリー」は、様々な案件を担当する代わりに、特定の業種を担当する部署です。業界の切り方は会社によって異なりますが、「自動車」「金融」「消費財」「エネルギー関連」「医療/ヘルスケア」「運輸・交通」「エンジニアリング・インフラ産業」「メディア・エンターテイメント」「パブリック」などあらゆる業界をカバーしています。

特定の業界について知見を持てること、様々な案件に携われるので、様々な経営課題に総合的に対処できる経験を積むことができることが強みです。一方で、プロジェクトの体制次第ではありますが、専門性が高いプロジェクトの場合、コアな部分の提案や実務は「コンピテンシー」のコンサルタントが行い、インダストリー側のコンサルタントはプロジェクトの管理がメインになるケースも多いです。

例えば、M&Aに関わりたいと思っていても、買収先企業の選定、デューデリジェンスM&A側のコンサルタントが行い、インダストリー側は予定通りにプロジェクトが進んでいるか?やプロジェクトの課題・リスクはないかを洗い出すPM的な役割になってしまうこともよくあります。

インダストリーのコンサルタントの抱える不満の1つはPMのスキルは身についても専門的スキルが身につかないことかと思います。その場合、インダストリーで自分が伸ばしたい領域の仕事を経験した後に、コンピテンシーに代わるという手もあります。実際、事業会社出身者は、最初は業界知識を持っているインダストリーに入社し、数年後に経験を積んでコンピテンシーに代わる人も一定数います。
(なお、コンピテンシーに異動できるかどうかは、異動する部署の人気度や求める基準にもよりますが、割と可能です。ただし、そのために、事前に受け入れ先の部署と接点を作っておき、良い評価をしてもらうなどの努力は必要です)

 

また、インダストリーで入社する際の留意点として、エージェントや面接の場を通して、事前にどのような案件が多いのかを確認しておくべきです。インダストリーは様々なコンピテンシーが要求される案件に携われることが魅力と書きましたが、業界によっては特定の案件の比率が高いというケースもあります。

例えばですが、金融業界は規制緩和の影響で銀行や保険会社が統廃合を繰りかえしており、複雑化した業務システムの統合や刷新が大きなテーマになっています。また、業務の性質上、非常に堅牢なシステムが求められることもあり、長い期間をかけて業務要件定義からシステムリリースまでプロジェクトが続くことも珍しくありません。そうした業界においては、システム案件が多かったり、特定のプロジェクトへのアサインが長くなるケースもあります。

せっかく、コンサルティング会社で様々な経験を積むことができると思ったものの、このような場合、自身が望んだキャリアを積むことができなくなることもあります。
この辺りの情報は、外部ではコンサルティング業界に詳しい転職エージェントが一番情報を持っていますので、インダストリーに入社を考えている方は、ぜひ、どのような案件が多いのかはきちんと確認するようにして下さい。

 

 

以上、コンサルティング会社に入社する前に知っておいて頂きたいことを説明してきました。
コンサルティング会社という聞こえの良さや花形のイメージにつられて、転職を考える人が多いですが、当たり前ながら、きちんと業務内容を確認して、自分の望むキャリアを築けそうかしっかり精査することが大事です。ネームバリューに惹かれるだけで転職しても、実際の経験が伴っていなければ、そこでの経験は無駄になってしまいます。そして、なにより、自分自身がやりたいこととは違うことに従事することになるので、単純につらいです。

ぜひ、そうした不幸な転職を避けるためにも、転職エージェントなどを通じて、情報を
収集して頂きたいと思います。