逆境のキャリア術

外資系コンサルタントとして勤務している経験から、転職やキャリアについて発信するブログです

面接の苦手意識がなくなる受け答えのコツ

“面接でしどろもどろになってしまって、上手く話せない“
”志望動機や自分の経験は上手く話せるが、面接官からの質問に上手く答えることができない“
”書類は通るけれども、面接をなかなか突破することができない”
など、面接に対して苦手意識を持っている人は多いかと思います。

面接で質問に対して適切に回答し、アピールするのって、なかなか難しいです。
特に、自分は面接が上手でないと思っている人や、面接を通過できた経験が少ないほど、苦手意識が強くなって、ますます面接を受けるのが億劫になってしまっているかと思います。

 

しかし、面接という場でのコツさえつかめれば、面接を突破することはさほど難しくありません。
よく巷には「結論から話す」などテクニックが語られていますが、そうした表層的なことではなく、より質問に対して的確に答えることができるようになり、かつ相手から“信用できる”“頭がいい”“仕事ができる”という印象を与えられるような受け答えをするにはどうしたら良いのかを書きます。

 

また、この方法を実践すれば面接だけでなく、日々の仕事もスムーズに進めることができるようになりますので、仕事が上手く進まなくて悩んでいる人にも、ぜひ、ご覧頂きたいと思います。

 

面接で的確に受け答えし、信頼される受け答えのコツ

的確に相手の質問の意図を汲んで答える

まず、面接で最も重要なことは相手の言っていることをきちんと理解して、相手が確認したい真意を推し量って回答するということです。
こう書くと当たり前のことのように思われるかもしれませんが、私が面接をした経験では、多くの人はきちんとできていないです。

 

例えば、面接でよく聞かれる次のような質問を例にとって考えてみましょう。
「これまでの人生であなたが失敗したことは経験は何ですか?」

 

もし、あなたが面接を受ける立場だったとしたら、どのように答えるでしょうか。
これまで私は面接官として、何度も上記の質問をしましたが、10人中、8~9人は次のように受け答えをします。
「本来、10個発注する製品を間違えて100個発注してしまい、先輩に指摘されて、慌てて発注を訂正しました」
「本来、上司に送付する予定だった仕事の報告書を、間違えて、全社員向けのメールアドレスに送信してしまいました」
など、実際にあった失敗経験を話をします。

 

もちろん、この回答で悪い訳ではありません。聞かれた質問に対して、回答はしているので、問題はないです。
ただし、この回答では、他の人と比べて印象に残らず、面接官にアピールすることができません。

 

大切なことは面接官の立場に立って、“その質問をすることで、何を確認したいのか?“を推し量って回答することが大切ということです。
面接官は単に、過去の経験を聞いているのではなく、あなたというビジネスパーソンが持っている資質を評価するために、質問をしているのであり、本当に確認したいことを考えて、それに対する回答をする必要があります。

さきほどの質問でいえば、
「失敗した時に思考停止にならず、リカバリーすることができるか?」
「失敗を次に生かして、仕事のミスを減らしたり、次に成功できるための学びを得ているか?」
というあなたの資質を確認しているのです。

メールを全社に一斉送信した例で言えば、
「上司に送るはずの報告書を全社員向けのメールアドレスに送信してしまいました。送った後にすぐにそのことに気が付きましたので、メールを取り消すとともに、全社宛てにメールを見ずにそのまま破棄して頂くようお願いしました。次回以降、ミスを防止するよう、送信する前にアドレスが間違っていないか2重チェックするようにしています」
と答えれば、面接官が知りたい、失敗に臨機応変に対応できたかや失敗を防止するためにとっている行動が確認できます。

 

このように、聞かれたことをそのまま答えるのではなく、質問を通して面接官が確認したいことを推し量って回答すると、自分の意を汲んだ回答が得られ、非常にコミュニケーションがスムーズな印象を受けるのです。

 

とはいえ、「面接官の意図を汲んで回答することの重要性は分かったけど、やろうと思っても実践できない」「どうすれば、面接官の意図を汲むことができるようになるのか教えて欲しい」と思われた方もいらっしゃると思います。基本は普段から相手の立場に立って考える訓練をするというのが回答にはなりますが、それでは抽象的なアドバイスですので、ぜひ、以下をのことをやってみて下さい。

 

面接でよく聞かれる質問の横に、「面接官が確認したいこと」を紙に書き出してみる

面接対策の本やウェブサイトで面接でよく聞かれる質問集などが載っているかと思いますので、そうした質問を通して、面接官が確認したいことを考えて、紙に書き出してみると、本当に回答すべきことが見えてきます。面接の場ですぐに面接官の意図を汲むのは経験も必要ですので、事前に時間をとって考えみると良いです。

自分で考えてもよく分からない場合は、転職エージェントの担当者に相談するのでもよいでしょう。自分が考えた回答を見せて、面接官の質問意図を汲んだ回答をできているのか相談してみて下さい。

 

自分が面接官役となってロールプレイングをする
もし、あなたが家族や友人で相談できる人がいれば、自分が面接官役となり、相手に質問をすることで、何を確認したいのか?を考えてみるのも効果的です。もし、そうした人がいなければ、1人で面接官になりきるのでもよいでしょう。質問をするという相手の立場になることで、どういった回答を引き出したいのか?何を答えて欲しいのかが、よく分かるようになりますので、ぜひ、一度、試してみて欲しいと思います。

 

テーマの全体構造を把握して回答する

これは少しわかりづらいかもしれません。テーマの全体構造を抑えるとは、そもそもどういうこと?と思われた方も多いと思います。

全体構造を抑えて回答する癖をつけることは、価値のある仕事をする上では必須であり、こうした考え方や受け答えができるかどうかは非常に重要なポイントです。
実際、コンサルティング会社の面接官として何人も面接してきた経験から言うと、全体構造を抑えて話をできる人は、入社後も仕事の目的を的確に捉え、バリューのある仕事を少ない労力で実践することができており、非常に重要な資質と言えます

では、「全体構造を抑えて回答できる」とは具体的にどういうことでしょうか。以下の具体例を基に説明したいと思います。

 

質問例)

「メーカーA社は離職率の高さで悩んでおり、特に、入社して5~10年目の社員が転職する例が増えています。もし、あなただったら、離職率を低下させるためにどのような施策を取りますか?」


このような質問の場合、まずは、社員が離職に至るのは、どのような要因があるのか?という全体構造を考えてみる必要があります。
ざっと考えてみただけでも、離職率に影響を与える要素として、以下のような要因が考えられ、それぞれの要素で、離職率が高まる原因と考えられる事象に対策を立てる必要があります。


①労働時間
長時間労働ワークライフバランスがとりづらいなど

②仕事内容やキャリア・成長実感
⇒仕事内容にやりがいを感じれない、成長実感が得られにくい仕事である、自分のキャリアに見通しが持てないなど

③.評価・報酬
⇒評価が不透明、不公平で不満がある、評価結果のフィードバックがなく納得度が低い、評価が高くても昇進や昇給しないなど

④.会社への愛着・帰属意識
⇒会社が社員を大切にしていると感じれない、会社の方針やビジョンに共感できずロイヤリティが低いなど

⑤.人間関係
⇒上司や職場の同僚とスムーズにコミュニケーションが取れない、人間関係が良くなく仕事をするのが嫌だなど

 

回答例)

上記のような質問に対する回答として、例えば、
離職率が高まる要因として考えられる点として5つあります。1つ目は労働時間、~~5つ目は人間関係です。
まずは、社員へのアンケートやインタビューを通じて、5つの要因のうち、どこに問題があるのかを明らかにした上で、重点課題に対して対策を立てます。
仮に、インタビューを通じて、人間関係、特に、上司と部下の関係性の改善が問題であれば、“上司と部下が定期的にコミュニケーションする場を設定する“、”上司に対する360度評価を行い、上司は部下から挙げられた課題を改善できているか否かかを評価の一要素とする“などの対策が考えられます」

のように回答をすれば、離職率に影響を与える全体構造をきちんと理解した上で、それぞれの職場に合わせて最適な選択を考えられることをアピールできます。

ビジネスにおける意思決定においては、「ある問題が生じている要因を俯瞰して把握し、それぞれの要因ごとにどのような対策を取ることが適切かを比較検討の上決める」というプロセスを取ることが多いです。

上記のように回答することで、面接官は”ビジネスパーソンとしての資質を満たしている”と評価します。また、全体構造を捉えて回答することは、“問題の構造をきちんと理解し、理路整然と考えることができる=ロジカルに思考できる”との印象を面接官に与えることもできます。

 

とはいえ、面接の場でとっさに全体構造を把握して、回答することは難しいと思われた方もいらっしゃるかもしれません。
その時に便利なのは、フレームワークで整理することです。フレームワークとは、ご存じの方も多いと思いますが、アイディアの発想や分析をする上で、便利な考え方を定式化したものです。

想定される質問について、フレームワークを使って全体構造を抑えて、回答を準備しておくと、理路整然と答えることができると思います。
また、質問された場合にも、全体構造を抑えておけば、どの部分について質問を受けているのかが瞬時に理解できるので、より的確に回答することができます。フレームワークについては、別途、改めてまとめたいと思いますが、面接において役立つものをいくつかご紹介します。

PDCA:物事を進める時の一般的な進め方を示したものです。「Plan(計画)」、「Do(実行)」、「Check(評価)」、「Action(改善)」の繰り返しにより、物事を進め、改善していくための考え方になります。あなた自身の仕事の進め方や工夫している点を伝える上で役立つフレームワークです。

5W1H: 情報を「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(誰が)」「What(何を)」「Why(何故)」「How(どのように)」といった要素に分けることで、検討すべきことや伝えるべきことを考えるための枠組みになります。このフレームワークは非常にシンプルで多くの人が知っているものの、実際に使いこなしている人は少ない印象です。事業の方向性を検討する、マーケティングや販促施策を検討するなど戦略的テーマを検討する場合から、日々の業務の報告、会議の設計をするケースまで幅広いシーンで活用することができます。

・3C:市場環境を「Competitor(競合)」「Compnay(自社)」「Customer(顧客)」に分けて分析するための手法です。特に、このフレームワークは、以下の観点で考えることで、事業の方向性や取り組むべき優先課題などを検討する際に役立つことが多いです。
-「Company(自社)」が提供できるものか?
-「Competior(競合)」と比較した時に、自社に優位性や差別性があるか?
-「Customer(顧客)」にとって価値のあるモノやサービスか?

上記の受け答えの仕方を参考に、想定回答を用意する

ここまで、面接での受け答えにおいて、重要と思われる点を書いてきました。
ここで書いたことは、「この質問に対してはこう答えれば良い」といったHow to ではなく、より広い場面で活用可能で、あまり本質的な点をお伝えしたいと思い書きました。

ただ、その分、実践で使うには、上記の考え方を参考に、実際に想定される質問に対して、あなたご自身が回答を考えてみる必要があります。また、その回答は、他の人が聞いても妥当性や納得性のある回答になっているか事前にチェックしてもらうことをお薦めします。

自分自身では気づかない改善点やその回答に対して想定される質問を投げかけてもらうことで、より回答に深みを持たせ、様々な角度からのツッコミに備えることで、自信を持って面接に臨むことができます。

特に、私自身の経験から言っても、応募する企業と直接やり取りをし、募集職種や面接官について情報を持っている転職エージェントの方に、事前に想定される質問への回答内容を相談しておくことは有効だと思います。

もちろん、エージェントの担当者も様々であり、応募者からのそうした相談に時間を遣いたくないという担当者もいます。また、担当企業やポジションについて深く理解しておらず、企業側が書いた募集要項を横流ししているだけの担当者もいます。
そうした担当者の場合、相談するだけ時間の無駄ですから、相手にしない方がいいです。

一方で、応募者の転職を真摯にサポートしたいと考えており、企業にも良い人材を紹介したいと考えている担当者であれば、必ずあなたの想定回答に対して、有益なフィードバックやアドバイスをしてくれますので、ぜひ相談してみて下さい。

  

最初から上手く実践はできないと思いますが、場数を踏めば踏むほど、より的確に、本質を突いた回答ができるようになりますので、実践してみて下さい。