逆境のキャリア術

外資系コンサルタントとして勤務している経験から、転職やキャリアについて発信するブログです

自分の将来のキャリアに不安を感じた時にやるべきこと

”自分の将来のキャリアについて漠然と不安を感じている”
”専門性もないまま仕事を続けてきたけれども、本当にこのまま今の会社に勤めていてよいのか不安”
など自分自身のキャリアに不安を感じている人は多いかと思います。

年金問題なども社会問題となる中、老後の生活を支えるためには、できるだけ長く働く必要もあり、この先も続く長い現役生活を考えた時に、働き続けられるだけのスキルがあるか不安と感じる人もいることでしょう。

私自身、新卒で初めて入った会社が経営危機に陥り、その結果として40代、50代の社員がリストラされるのを見てきました。その経験から、終身雇用はすでに崩壊しており、会社に依存するのではなく、自らキャリアを構築する必要があることを実感しました。

でも、普段、会社に勤務していると、会社が経営危機に陥っていることやリストラの可能性があることは実感しづらいものかと思います。でも、大抵の場合、会社が経営危機やリストラを必要とする状態に陥っていることは、一般の社員は知らないところで進行しており、気づいたら会社に居場所はないことも残念ながら、想定しておいた方が良いことです。

そもそも、平均して企業の永続年数は25年ほどと言われているのに対し、大学を卒業して65歳まで働くと想定すると、仕事をする期間は42年ほどあり、1社で定年まで勤めあげる時代ではないことは明らかです。

自分自身のキャリアに不安を抱く人がまず、始めるべきことは何か?
そして、この先続く長い現役期間を乗り切るためのキャリア設計をどのように立てるべきか?について解説したいと思います。

 

 

 

職務履歴書を基に今の市場価値を知る

私がおすすめするのは、まずは、乱雑でもいいので、「職務履歴書」を書いてみるということです。「職務履歴書」とは、これまでのあなたの主な仕事の経験と、そこで得られたスキル、知見などをまとめたもので、転職の際に応募先企業に提出する資料になります。以前に書いたことがある人で、しばらく書いていない人は、もう一度リライトしてみて下さい。

なぜ、職務履歴書を書くことをお薦めするかというと理由は2つあります。

1つ目の理由は、職務履歴書を書くことを通して、あなたの職歴を棚卸し、そこから得た知見や学びを振りかえることができるからです。普段は、日常業務をに追われて、なかなか自分の経験やそこから得た学びやスキルを振り返ることはできません。でも、職務履歴書を書くことで、入社してから自分が経験したことや仕事を通して得られたものを整理することができます。自分が今までの経験で得られたスキルを把握できれば、今後、目指すキャリアを考える上で、どのようなスキルや経験を積む必要があるかを確認することにも役立てられます。

2つ目の理由は、職務履歴書を書いたら、転職サイトに登録すると、企業や転職エージェントからスカウトメールが来ます。スカウトメールとは、端的に言うと「あなたの職歴に興味があるので、面談させて欲しい」というメールのことです。スカウトメールの中には、具体的な募集ポジションの情報も一緒に添付されているケースもあり、あなたの職歴からして、どのような職務や役職、年収で採用される可能性があるかを知ることができます。

例えば、私がコンサルティング会社に転職したケースでいうと、職務履歴書を登録した後に、複数のコンサルティング会社からメッセージをもらいました。
当時、私は入社10年目で、部下もおり、マネジメント職の一歩前でしたが、コンサル未経験だったため、役職はコンサルタント(最も下位のジュニアスタッフの位置づけ)で、年収も100万円ほど下がるオファーでした。

こうした情報が収集できると、たとえ事業会社でマネジメント職に近いポジションであったとしても、コンサル未経験者ではジュニアスタッフでの採用となるという厳しい現実を知ることができます。

 

なんとなく、コンサルタント職に憧れをいただいていた私でしたが、給与などの条件が下がってでも、チャレンジしたいかどうかを自分自身に投げかけることで、より転職意思を確固たるものにし、将来のキャリアビジョンを真剣に考えるきっかけとなりました。

このように、実際に、企業や転職エージェントからリアクションが得られる(仮に、残念なことに志望する業界からリアクションがなかったとしても、それが現実だと理解できる)という点で、ぜひ、最初に、職務履歴書の作成に取り組んでいただきたいと思います。

 

ロールモデルを見つけ、将来のキャリアビジョンを明確にする

現在の自分の経験・スキルを棚卸し、市場価値をざっくりと把握できたら、次は、自分の将来のキャリアゴールを設定します。「キャリアゴールを設定する」と簡単に書いてしまったのですが、これは実際にはなかなか難しいことだったりします。

特に明確なキャリア意識を持って働いてこなかった人からすると、“いきなりキャリアゴールを持てと言われても、どうしたら良いか分からない”“そもそも、自分はどういう方向性を目指したら良いのか分からない”という人も多いと思います。

そうした人にはぜひ、以下の2つを通して、キャリアをゴールを見つけて下さい。

①これまで自分が楽しんで仕事に取り組めたことややりがいを感じたことを見つけ、それを極める
これまでの仕事の経験を振り返って、やりがいを感じたり、面白さを感じた仕事があると思います。そうしたあなたが心から打ち込める仕事は、熱量が高い分、スキルを磨くことができますし、困難に直面しても乗り越えることができる可能性が高まります。

例えば、私であれば、入社してまもなく担当した、新商品上市前にマーケット分析や顧客ヒアリングを実施し、狙うべき顧客ターゲット層を商品のポジショニングを考えるというマーケティングの仕事に非常に面白さを感じ、マーケティングや事業戦略でキャリアを築くことをゴールに据えました。

そうした自分自身の経験に基づいて、キャリアゴールを設定すれば納得度が高くなりますし、仮に転職することになって志望動機を話す際にも、説得力のある話をすることができます。

ロールモデルを見つけ、自分のキャリアのゴールにする
さきほど紹介した方法は、これまでのあなた自身の経験からキャリアゴールを見つけるものでしたが、“特に、今のところ、これをやりたいと思える仕事に出会えていない”“今の仕事とは違い方向で頑張りたい”と思っている人もいると思います。
そうした人には、目指すべきロールモデルを見つけて、その人になることをゴールにする方法をお薦めしたいと思います。

ロールモデルは、有名人でも、身近な人でも誰でも構いません。あなたが心から“この人のようになりたい!“と思える人であることが必要です。
あるいは、人ではなくて、入社するのに憧れを感じるような“XXXという企業で働いている人になりたい“という設定でも大丈夫です。
そして、もし、そういう人を見つけたら、その人がどのような経験を経て、今のキャリアを築いたのかを調べてみて下さい。

著名人であれば、本や雑誌、ウェブサイトなどが情報源になります。著名人ではなく、特定の企業で働いている人に憧れを感じるなら、例えば、ビジネス特化のSNSであるLinkedinなどのサービスを使えば、あなたが目指している企業で働いている人が登録されていれば、どのような職歴で現在のポジションに就いているのかを検索することができます。

ただし、現状、Linked inに登録しているのは外資系企業に勤務者の比率が多い印象があるので、日系企業を目指している方は見つけられない可能性もありますが、もし、何人か見つけられれば、どのような経験を積むとあなたが目指している企業に転職することが可能かを推し量ることはできます。そこから、自分が今後、経験を積むべきことや身に着けるべきスキルを知ることは可能です。

ちなみに、外資系企業は転職エージェントに紹介料を払う必要がなく、コストを抑えてリクルートできるという点でLinked inを使う企業は多く、未公開求人の案件を探し当てられる可能性はあります。もし、グローバルに働きたい、英語を使って仕事をしたいという志向をお持ちの方は、Linkedinに登録することをお薦めします。(実際、私の周りでもLinked in経由で外資系企業への転職を決めている人は多いです)

 

目指すキャリアを実現するための戦略を練る

目指すキャリアゴールが決まれば、それを達成するために、どのような経験を積み、スキルを身に着けるかを考える必要があります。
その時に意識して頂きたいポイントとして、「市場から需要があり希少性のあるスキル」でかつ、「他社に転職しても通用する汎用性のあるスキル」を身に着けていただきたいと思います。

「希少性のあるスキル」とは、要は、“あなたでないとできないことを増やす”ということです。例えば、入社して経理部に所属し、ファイナンスの実務に詳しい人がいたとします。しかし、ファイナンスに詳しい人はたくさんいるので、それだけでは、希少性のあるスキルとは言えません。でも、そこにファイナンス×新規事業開発の立ち上げのスキルが加われば、希少性は高まり、例えば、スタートアップの資金調達を期待されてCFOに抜擢されるなどのキャリアが期待できます。

つまり、希少性が高い=労働市場においてできる人が限られているレアな人材である、ということであり、あなたのキャリアにとってプラスとなるようなレアな機会に恵まれるチャンスが増えることになります。

希少性のあるスキルを身に着けるためには、職務経歴書を書くことで棚卸した自分のスキルに、何を掛け合わせると価値が高まるのかを考えることから始めます。どのようなスキルを掛け合わせると価値が高まるのかは、自分で調べて考えるのもよいですが、転職市場の動向に詳しい転職エージェントの方からアドバイスをもらうのが一番良いと思います。自分が思ってもみなかった方向性で価値を高められる可能性があるかもしれません。

掛け合わせるスキルが決まったら、あとは、どのような機会を通じて、そのスキルを身に着けるかを考えます。その際、いきなり転職を考えるのではなく、まずは、自社内でそうしたチャンスがないかを探ってみて下さい。自社であれば、労働条件が変わることなく、新しいスキルを身に着けられる機会があることの恩恵は大きいです。

自社内に習得したいスキルを得る機会がない場合には転職を考えてみて下さい。ただし、その場合は、必要なスキルがない状態での転職になるので、待遇面はやや悪くなる可能性があるのと、30代を超えると、そもそも採用されない可能性も高まります。そのため、「自分が今持っているスキルで会社に貢献しつつ、新たなスキルを学ぶことが可能な企業を探す」、あるいは「成長している企業で人材不足に困っており、未経験でも可能な企業を見つける」という選択が現実的な対応になります。

「他社に転職しても通用するスキル=ポータルブルスキル(持ち運び可能なスキル)」を磨くことも大切です。その企業でしか通用しないスキル(例えば、社内調整、根回しの流儀など)をいくら磨いても、他社で通用しないため、あなたのキャリアを切り開く力となってくれません。冒頭でも述べた通り、終身雇用の時代は終わり、複数社で働くことが当たり前の時代になりつつありますので、社内だけで通用するスキルに時間を割くことはやめて下さい。

とはいえ、転職したことがなく1社しか働いたことがない人からすると、ポータルブルスキルとは具体的に何かが、イメージしづらいかもしれません。要は、仕事の進め方、対人コミュニケーションの取り方、問題の設定・解決方法、論理的思考力など、質の高い仕事をする上で、どの会社で働いても必要とされる能力のことを指します。こうしたポータルブルスキルを磨くことで、会社に依存せず、自らの力で目指すキャリアをひき開いていくことができるはずです。

 

以上、今のキャリアに不安を持っている方に向けてやるべきことを説明してきました。
大切なことは、「これまでのキャリアを一度棚卸して、将来を見据えて何を磨くべきかを考える」機会を作るという点につきます。そのための手段として、職務経歴書を書いてみたり、転職エージェントやLinkedinなどのサービスを活用して、あなたのキャリアゴールと実現に向けた戦略を練って頂きたいと思います。

とはいえ、ここで述べたことを“いきなり自分で考えられるか不安”、“他の人からアドバイスを聞きつつ考えたい”という人は信頼できる友人に相談するのもよいですし、転職エージェントに相談に乗ってもらうのもよいかと思います。

キャリア形成は期限が決まった業務ではないので、重要と思いながらもついつい後回しにしてしまいがちです。しかしながら、あと回しにするほど、選択肢が限られ、キャリア形成におけるビハインドを負うことになるのもまた、事実です。そうならないためにも、友人や転職エージェントと相談のアポを取って、すぐに行動するという方法はお薦めです。この記事を読んでくださった方は、ぜひ、あなたの仕事人生を豊かなものにするためにも、今ここで行動して頂きたいと思います。